3 ツバメの繁殖

Q12 ツバメはなぜ、人家や人の出入りの多い所(玄関や軒下など)に巣を作り、樹木や草地に作らないのですか。

A12 ツバメが人目につきやすい所で営巣するのは、巣や卵や雛を、他の鳥の攻撃やヘビなどから守るためで、人間をガードマン代わりに利用しているためのようです。人がいつもいるところ、人の出入りが多いところでは、巣を奪うスズメや卵や雛を狙うカラスなどが近づかないことから、力の弱いツバメは人間の近くで営巣することによりその非力をカバーしていると考えられます。(川内博「四季の野鳥」)

 

Q13 ツバメは巣を単独(つがい)で作るのですか、それとも集団で作るのですか。

A13 ツバメの仲間はイワツバメのように集団で巣を作る(これをコロニーという)種類が多いが、ツバメは単独で巣を作るのが一般的です。しかし、一つの建物に数つがいが一緒に巣を作っているのも稀に見かけることがあります。ただ、この場合でも数個の巣がある程度で数十、数百というようなコロニーを作ることは無いようです。

 

Q14 ツバメの巣の特長を教えてください。

A14 巣の材料は泥と枯れ草に唾液を混ぜて椀形に垂直な壁に作られるのが多いが、台、電線のコードの上などにも作ります。最近は道路が舗装され河川もコンクリート護岸が多く泥が集めにくくなってきているので、約半分は去年の巣を補修して再利用しています。雄雌共同で巣作りします。新しい巣を作るには巣材を集め、8日くらいで外装はできあがり、その後産座に羽毛など敷いて完成させます。大きさは外径12.1〜15.1p、内径6.7〜12.2p、深さ1.5〜3.6p位で椀形です。

 (「日本の野鳥」(山と渓谷社)、「大都会をいきる野鳥たち」(地人書館「野鳥の生活」(築地書館))

Q15 ツバメは一夫一妻ですか。

A15 一夫一妻です。一夫多妻の例も記録されてはいるが、まれであるといわれます。また、何らかの原因で、相手が死んでしまったような時には、新たにペアをつくるものと思われます。

  (バーダー 96,4月号 「ツバメってどんな鳥」)

Q16 ツバメの育雛は、雌雄共同で行うのですか。また、抱卵は雌雄どちらが行い、抱卵期間と巣立ちまで何日くらいかかりますか。

A16 ツバメは巣作りから、雛の巣立ちまで雌雄共同して行います。抱卵はおもに雌が行います。しかし、雌が餌とりや水飲みに出かける時だけ雄が代わって卵を抱きます。雌が抱卵中は、雄は巣の近くで外敵から巣や卵を見張って警戒しています。(本若博次「ツバメの観察事典」)

雌はくちばしで卵の向きを変えたりしながら、辛抱強く卵を温めます。親鳥が抱卵を初めてから2週間ほどするといよいよヒナの誕生です。生まれたばかりのヒナは羽毛も生えそろわない裸ん坊です。目はまだ5〜6日は開きません。親鳥はヒナの体が冷えないように体の羽毛の中に包み込み温めます。ツバメのヒナは孵化してから20日前後で巣立ちます。

(誠文堂新光社 カラーアルバム「ツバメ・ムクドリ」)

 

Q17 ツバメは卵をいくつ産みますか。又、卵の色、大きさは。

A17 ツバメが卵を産む時期は4月の終わり頃から7月の終わり頃までです。ツバメは毎日1個ずつ合計3〜7個の卵を産みます。卵は長い方が19o、短い方が14oぐらいです。アーモンドぐらいの大きさのだ円形で、白い地に茶色や紫色の小さな斑点がついています。

(あすなろう書房 みる野鳥記2「ツバメのなかまたち」)


Q18 ツバメは1年に何回繁殖するのですか。

A18 4〜7月にかけて1〜2回繁殖しますが、2回が多いようです。低緯度では3回繁殖する個体もいるようです。

  (「ツバメ燕」 木村文彦ホームページ 1998/5/29改訂)

Q19 ツバメの雛はなにを食べているのですか。

A19 雛への給餌は雄雌で分担して行い、ハチ ハエ メイガ カメムシ ウンカ ゾウムシ アブ トンボなど空中を飛んでいる多数の昆虫です。雛5羽の巣の観察では1日最高639回給餌した記録があるので、雛は1分間に1回食したことになります。給餌は巣立った後もしばらく続けられます。

(「野鳥の生活」(築地書館)、「里山の野鳥」(星雲社)、Q27参照)


Q20 ツバメの巣立ち雛はどうしているのですか。間違って他の巣に入らないのですか。 

A20 ツバメのヒナは、孵化後20日前後で巣立ちます。巣立った後、数日間はヒナ同士一緒に行動し、電線などに止まって親から給餌を受けます。また、巣立ち後1〜7日間位は巣に戻って寝るが、1〜2週間し、自分で餌を採れる様になるとヨシ原等で集団塒をとる様になり10月中旬頃から南へ渡って行きます。縄張り(テリトリー)の関係もあり他の巣へ近づくと親鳥から激しく追い出されますから間違っても他の巣へ入ることは考えられません。

 

Q21 「ツバメ」の親は5〜6羽もいる「ヒナ」にどうやって順序よく餌を分けてやっているのだろうか。又、「ヒナ」は巣の中で並ぶ順はいつも同じですか。或いは入れ替わるのですか。

A21 親鳥は餌をもって巣に戻ってくると、大きな口を開けている「ヒナ」から順番に食物を与えていきます。「ヒナ」はおなかがすいている者ほど前に出て口を開けているので、最後には皆な同じ位の餌をもらいます。まだ目が開かない頃の「ヒナ」は、親が巣に戻ってきたことを振動によって知ります。振動を感じると上に向かって首を伸ばし、口を開いてジャージャーと鳴きながら餌をねだります。やがて目が見えるようになると、餌を運んできた親の方に向き、いっせいに口を開いて、押し合いへし合いするようになります。押し合っている内に、巣の外に落ちてしまう「ヒナ」もいます。ある観察では「ヒナ」がかえって6日目の頃、親鳥は朝6時から夜の7時まで1日に300回以上餌を運んだそうです

(「ツバメのなかまたち」あすなろう書房、「ツバメの街」フレーベル館)

Q22 巣の中の糞はどのように処理しているのですか。

A22 雛が小さいうちは、糞をすると親はすぐに嘴でくわえ外に持ち出します。ダニや寄生虫がつかないように常に巣は清潔にします。また、雛が大きなると、巣の外に糞をするようになります。

  (「ツバメ・ムクドリ」菅原光二著)

 

Q23 雛のいるツバメの巣が壊れました。また、雛が巣から落ちていました。どうしたら良いでしょうか。

A23 壊れた程度にもよりますが、自然の成り行きに任せる方法と、落ちかけた程度なら軽く補強してやる方法の2つの考え方があります。前者は、冷たいようですが自然の掟です。巣から落ちた雛の扱いも前記と同様です。助けるなら巣に戻してやることです。赤裸の雛の場合、親鳥による保温やケアが必要で、人の手で養うのは難しい段階です。孵化した雛も途中で巣から落ちたり、外敵に襲われて死んだりするものが少なくないのが自然の仕組みです。巣立ち雛なら、その場を立ち去るか、付近の小枝など猫やカラスが入れない場所に移してやることです。巣立ち直後の雛は、まだ人を警戒することを知らない上に、動作が鈍く、うまく飛べません。親鳥による給餌や安全管理のもとで、これから生きのびる術を学習している大切な時期です。雛を拾って持ち帰ることはやめましょう。(「野鳥」日本野鳥の会 632号)

 

Q24 ツバメの巣がカラス、ネコ、ヘビ等に襲われそうになった時どうするのですか。

A24 ツバメの3大天敵はカラス、ネコ、ヘビであるが、都市部ではヘビの害は少ない。カラスはツバメの巣を定期的に見回り雛が孵った頃や大きくなった頃を見計らって襲うという知恵を持ち合わせています。ネコについてはツバメの巣は高いところにあるので問題ないが、たまたま巣の近くに止まった車をジャンプ台にして襲ったり、巣に出入りする親鳥が低空で飛翔するのを物陰に待ち伏せて襲ったりもします。

ツバメが人の出入りの多い場所を好んで営巣するのは、人間にこれらの外敵から守ってもらうためである。従ってツバメが営巣した場合にそっと見守るのは逆によくない。むしろ積極的に見守ってカラス、ネコ、ヘビ等を寄せ付けないようにした方がよい。巣がカラス、ネコ、ヘビ等に襲われそうになると親鳥がいつもと違う鋭い声で激しくなくので、直ぐ駆けつけて守ってあげて欲しい。

(「ツバメ燕」木村文彦ホームページ Q34参照)

 

Q25 ツバメの子育てにヘルパーはいるのですか。

A25 ヘルパーとは、鳥の繁殖活動を手助けする両親以外の個体のことです。ヘルパーは、繁殖のつがいを形成できなかった未婚者や繁殖に失敗した個体などが子育ての手助けをし、雛に餌を運んで与えたりします。(野鳥用語小辞典)

 ツバメの繁殖システムは、通常の場合一夫一妻であり、子育ても両親によって行われると言われています。しかし、何かの事由で片親(雌)だけで子育てを行い、巣立ちに成功した観察例もあります。このような例では、別の雄が現れつきまとうが子育て(餌運び)には参加しない(仁部富之助「野の鳥の生」)のでヘルパーと言えるか疑問です。一方、3羽以上で子育てをするいわゆるヘルパーの存在は、エナガ、オナガなどの観察例が報告されています。ツバメでも報告があります。ヘルパーが存在する理由は、餌の条件が厳しいこと、つがいを形成できなかったものや若鳥では繁殖の訓練など想定されるが正確には分りません。エナガなどでは、繁殖成功率は高くなると言われています。 (「現代の鳥類学」朝倉書店)

 

Q26 ツバメにテリトリーがあるのですか。活動範囲(行動半径)はどのくらいか。

A26 テリトリーといえるか分かりませんが、巣作りの時期には条件の悪いところでは、1q以上も離れたところから泥を運んでくることもあります。また、繁殖期には巣から数百m以内と狭い範囲で採餌行動をしているようです。

  (「ツバメ燕」 木村文彦ホームページ 1998/5/29改訂)

(「ツバメ・ムクドリ」菅原光二著)